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ダルビッシュ有 「まだ見ぬ完璧」/特集:WBC後の選手たちを追う!
text by
藤島大Dai Fujishima
photograph byMakoto Hada
posted2009/06/26 11:00
「ことしはマウンドで笑顔が多くなった」という確かな成長。
それでも与田は言う。
「キャンプの時から、すでにダルビッシュはブルペンの土を固くしていた。WBC用のボールもロージンもすべて用意されている。何カ月もかけてパーフェクトな準備をしてきてくれた。大会が終わるまでは日本のボールに触れもしない。それだけの気持ちで日の丸のユニフォームを着た。すでにそのことが国の代表としての意識の高さを示していると思う。案外、ナニワ節でもあるんです」
ジャパンの一員としてWBC連覇にかけた意欲。北海道日本ハムファイターズの主力としての自覚。それぞれ打ち消し合う関係にはない。あちらが伸びれば、こちらは縮むのでなく、こちらもまた伸びる。ひとりの野球人の倫理観にあっては同じ地平に存在する。
倫理観。おおげさだろうか。
実際、ダルビッシュはこう言うのだ。
「最近、よく思うんです。野球が好きだって。生活の中に野球があってこその私生活でもあるし、それがなくなった時、どうなるんだろうかと」
さらに。
「ことしはマウンドで笑顔が多くなった。ひとつ野手がボールをさばいてくれたら、そのつど声をかけてますし。ありがたみ、本当にわかるんで。いま、みんなで楽しく野球ができている。北海道のファンは温かい。だから明るいチームでいられる。感謝してます。あれだけ応援してくれるので、僕らも楽しい気持ちを持てて、僕らが楽しんでいるからファンのみなさんにも楽しんでもらえるのだと思います」
(続きは Number731号 で)
ダルビッシュ有
1986年8月16日、大阪府生まれ。東北高校3年の時に北海道日本ハムファイターズからドラフト1位指名を受ける。2005年に入団し、シーズン途中から先発ローテーションに定着。翌年には12勝を挙げて、チームを44年ぶりの日本一へ導く。'07年は15勝でリーグ連覇に貢献し、'08年は北京五輪にも参加。WBCでは抑え役もこなし優勝投手になった。196cm、85kg