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ブラジル代表密着記 「ドゥンガが吼え、ロビーニョが笑う」
text by
藤原清美Kiyomi Fujiwara
posted2007/07/26 23:53
ドゥンガvs.メディア、仁義なき戦い。
監督になってからの苦労を、ドゥンガに聞いたことがある。
「セレソンの監督というのは、問題が起こらない日がない。やることなすこと問題になる。たとえば選手のポジションを変えた。問題になる。ある選手を選ばなかった。問題になる。背番号を決めた。問題になる。何をやっても論争だ。いつでもすべてに注意を払っていないといけない。でも、プライオリティはいつも『セレソン』にある。他の人から何を言われるかなんて重要じゃない。私が考えるべき大事なことは、セレソンにとって、何が一番良いかだ」
ドゥンガはそもそも、メディアと仲良くやろうなんて思っていない。だから、記者会見のたびに両者の間で口論となる。
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記者「あなたが招集する選手は、大半がヨーロッパ組です。国内で選手を発掘する気はないんですか?」
ウンザリ顔のドゥンガがこう返す。
「国内で若手を発掘しても、クラブがすぐに外国に売ってしまうだけのことだ。マルセロはフルミネンセにいたが、レアル・マドリーに売られてしまった。ラファエル・ソビスはインテルナシオナルにいたが、ベティスに売られてしまった」
コパ・アメリカの事前合宿では、「紅白戦の回数が少ないのでは?」という質問が相次いだ。練習法をとやかく言われ、さすがのドゥンガもキレた。
「あんたらもピッチでやってみればいい。そうすれば、ミニゲームがどれだけ効果的か、すぐに分かる!」
こんなこともあった。練習後に会見の予定が組まれていたある日のこと、しかし、練習が終わってもドゥンガが一向に現れない。
「なんでドゥンガは来ないんだ!」
記者が声を荒らげ始めたころ、ドゥンガはジョルジーニョと一緒にジョギングをしていたことが判明。今度はメディアが反撃する番だ。生中継のラジオリポーターが、すかさずマイクを握る。
「報道陣は全員スタンバイしている。ところがドゥンガが現れない。なんと! ドゥンガはジョギングだって?― なぜだ!― なぜ我々を待たせてジョギングなんだ!」