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長島茂雄大いに語る。 <再録連載第3回> 

text by

瀧 安治

瀧 安治Yasuji Taki

PROFILE

photograph byTakashi Tsunoda

posted2009/05/25 11:01

長島茂雄大いに語る。 <再録連載第3回><Number Web> photograph by Takashi Tsunoda

再録連載 第3回(2/3)

みんなヤング・ボーイ。精神力が必要。

――何とかって、監督として具体的な方向づけはしてるんですか。

長島 それは精神力というものだろうね。やっぱりチャンスに強くなる、あるいはこの一球でビシッと決めていくというのは精神力なんだよ。
その精神力を生かすというのは、要するにプレーヤーとしての心構えだからね。単なる技術のコーチじゃなくて、内面の問題になってくる。特にうちは、王、柴田、高田あたりを除いては、みんなヤング・ボーイだから。多摩川から出てきて、ここ一、二年でしょう。いわゆる実績も経験もないんだから。ゲーム経験がないんだから、大事な場面になるとおたおたしちゃってるんだな。迷える仔羊みたいに。そういう選手の内面も教育していかないといけないということなんだ。

――グラウンドで技術を教えるだけじゃなく、グラウンド外でもやるんですね。

長島 内面の精神力というのは選手の野球に対する姿勢だからな。これはユニフォームを着た時とか脱いだ時とかいうものじゃなくて、ふだんの生活の心構えから関係がある。そういう点から、ゼロから教育し徹底していくようにしてるんですよ。遠征に行けば選手を部屋に呼び、お茶を飲みながらレクチャーしたり、仲間で話し合いさせたりね。王や、柴田や高田には、何でも気がついたことはどんどん選手に教えてやれって言ってあるんですよ。たった一年か二年レギュラーやって何も知らない選手ばかりが、そのまま、四年、五年たったらどうします。もう巨人軍の伝統の崩壊ですからね。
今の若い選手の中には挨拶も満足に出来ないのがいるんだから。面と向って声をかけないで、横を向きながら「おはようございます」とかね、「おやすみなさい」。これは一般の人がきくと、ちょっと信じられないかもわからないけどね。

――チームが不振になってきた時など、ジャイアンツのOBの人がコーチに来てくれたりしますよね。たとえば千葉さんがバントを教えたり、藤田さんが新浦を教えたりとか。監督は何か現在のコーチに満足していないんじゃないか。監督が教えてほしいと思うことがコーチに伝わってないんじゃないかって気がするんですが、どうですか。

長島 コーチにはガンガン注文を出してますよ。話し合いも、ものすごくやってるんですよ。まあ、昔のジャイアンツからは想像出来ないでしょうね。

――技術的にも精神的にも議論することが多いんですね。

長島 いまは、こうしてポロポロとミスしてよく負ける。一体なぜ負けるんだ、なぜ打てないんだ、なぜエラーするんだ。その反省と原因の追求というものはね、われわれはガンガンやってますよ。コーチにもガンガン注文しますよ。
後楽園のロッカー出るのは、監督、コーチがいつも最後で、選手なんか誰もいませんよ。風呂なんかいつもヒヤッと冷たくなってますよ。そのくらいガンガンやってます。まあ、これは喧嘩じゃなく、いわゆる建設的な意見を出し合ってるわけだからな。

【次ページ】 今はありとあらゆる手を尽くしてるよ。

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