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桜庭和志 「僕がいちばん言いたかったこと」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
posted2007/02/08 00:00
今回の一件でFEGは、これまで主催者と審判団だけで行ってきたルールミーティングに選手を参加させることになった。早速、桜庭、宇野薫、所英男らがミーティングに参加し活発な論議が交わされたという。
「いい話し合いができました。みんなが総合格闘技をより良くしていこうという方向性で気持ちが固まりました。ルール設定に際し、審判団だけではなく選手側の意見も取り入れるというのは、今までになかったことですしね。イメージの良くない試合だったかもしれないけど、結果的にみんなの気持ちに火をつけることになった。それだけでも収穫はあったと思います。ルールを細かく厳正なモノにして、選手たちもモラルを身につけ、子供たちに夢を与えられるスポーツになればいい」
そう言うと桜庭は明るい表情を見せた。ルールミーティングには今後、打撃系選手も加わる予定だ。昨年大晦日に彼が流した血は大きな推進力となってこれまで総合格闘技に欠けていた部分を補うものになるかもしれない。
そして、ポツリと言う。
「僕の選手生命はあと数年で終わるでしょう。だから、やっているうちにしっかりとしたルールは作っておきたいなって」
選手生命は永遠ではないけど、ルールは永劫続いていく。総合格闘技は概念が生まれ20年以上になるが、その競技形態の複雑さゆえ戦い方やルールが安定せず未だ過渡期にあるスポーツである。もし優れたルールが生まれれば、現在桜庭が所属するHERO'Sに限らず、他団体も採用するかもしれない。となれば、現状況ではあまりに飛躍的な考え方かもしれないが、団体の枠を飛び越え統一ルールのもと試合が行われる日もくるかもしれない。
「そうなるといいですねえ」
桜庭はなんともいえない表情で夢想した。
「'02年に国立競技場でやった第1回の『Dynamite!!』みたいに、HERO'SもPRIDEもUFCも集まって試合をする。やる側も夢を持てるし、観るほうも夢が持てる。野球のWBCやサッカーのW杯みたいに絶対に盛り上がるはずですよ。でも、まずは次の試合に向かって練習しなきゃ。そろそろまたブラジルへ修行に行ってきますよ」