13日目にも決まると思われた優勝は、千秋楽まで、もつれにもつれた。秋場所の大混戦を演出したのは琴欧州の躍進であり、そして終盤の大失速だった。
新関脇の連勝記録を12に伸ばした琴欧州は、この時点で横綱・朝青龍に星2つの差をつけていた。13日目の直接対決を制し、全勝優勝を達成すれば、大関昇進との声まで囁かれ始めた。勝るのは横綱の意地か、それとも新関脇の勢いか。
29本もの懸賞がかかった大一番は、短いながら見どころ一杯の激闘となった。左上手を狙って低く左足から踏み込んだ琴欧州。その上手を与えず、逆に左から押し込んだ朝青龍。朝青龍は押し切れぬと見るや素早く叩いたが、前のめりについていった琴欧州は念願の左上手に手をかけ、横綱を後ろ向きにした。しかし、絶体絶命の体勢の朝青龍は驚異の粘りを見せた。瞬時に体をひねって左上手を切ると、バランスを崩して前に飛び込んできた琴欧州の首を左脇に抱え、首ひねりの荒技で土俵に叩きつけた。この瞬間、琴欧州初優勝への流れがピタリと止まった。背後に忍び寄る朝青龍の影に自らを見失った琴欧州は、14日目の稀勢の里戦では全く力を発揮できず、腰高の弱点を露呈し自滅。千秋楽を前に遂に朝青龍に並ばれてしまった。
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