冷気に包まれたグラウンドの一角に、静かな、しかし熱い空気を発してピッチを注視する一団がいた。年末の花園。全国高校大会の2回戦。シード校の茨城・茗溪学園と対戦していたのは静岡の東海大翔洋。静かな応援団の手には手書きの応援ボードが掲げられていた。
「SH倉津がんばれ!」「完全燃焼!」
熱い視線を浴びていた東海大翔洋の3年生SH倉津圭太は、生まれつきの難聴者だ。中学時代は野球に打ちこんだが「激しいスポーツがしたくて」反対する両親を説得し、高1でラグビー部へ。プレー中は補聴器を外すため周りの音は聞こえないが、読唇術とブロックサインで仲間とコミュニケーションをとる努力を重ね、背番号9をつけて花園へ。1回戦では高知・土佐塾に88対0で圧勝。2回戦では高校日本代表SH田村弘毅を擁する茗溪に59対3で大敗したが、倉津の滑らかで伸びるパスと頑健なタックルは最後まで光った。
特製トートバッグ付き!
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
photograph by Nobuhiko Otomo