例年なら大詰めまでわからない年度代表馬の行方だが、今年ばかりは有馬記念の結果にかかわらず、ディープインパクトで決まりだろう。無敗での三冠達成という輝かしい功績は言うまでもないが、ファンの新規開拓に多大な寄与をしたことでも、近年これほどの馬はいない。武豊騎手の言葉を借りれば、「JRAはディープインパクトに頼りすぎ。よりかかっているように見える」とも言えるのだが、主催団体としてはこれほどのビッグチャンスは滅多にないと考えるのも当然。競馬人気の底上げと安定のために、盛り上げるのもアリだと思う。
30年ほど昔の話。ハイセイコーという地方競馬出身のアイドルホースが出現したとき、彼が走る姿を見たさに中山競馬場に押し寄せたファンが、その重みでスタンドと芝コースとの境にある柵を押し倒してしまうという伝説を作った。しかし、その人気はダービーで初の黒星を喫したことで失望を呼び、さらに何度かの敗戦を続けるうちに徐々にしぼんで行ってしまった。そう、人気とは勝手なもの。ディープインパクトだけには、「墜ちた偶像」の見出しをつけてもらいたくない。
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photograph by Shigeyuki Nakao