ますます大きくなる雨粒でずぶ濡れになりながら、心の中で祈っていた。
俺のところに飛んでくるなよ――。
ところが、嫌な予感はときに最悪の形で的中するものである。
1-0で迎えた9回表2死三塁。三塁の正面にゴロが転がった。白球が泥にまみれて茶色に染まっていく。東北の三塁手・横田崇幸は両足が鉛のように重たくなっていく感覚を覚えた。
ボールを弾いた。慌てた。一塁ベースの方向を確認できないまま、無我夢中で右腕を振った。悪送球――。痛恨のタイムリーエラーを犯したところで、彼の記憶はいったん途切れている。
「YouTubeで見返したら、エラーのあとに一度、マウンドに集まっています。でも、どうにもそのシーンを思い出せないんです。僕のエラーがなければ、ダルは3試合連続完封を達成できていた。あまりに申し訳なさ過ぎて、もう放心状態だったのだと思います」
記憶は1-1の9回裏から再開される。先頭は4番の横田。野球人生で初めてホームランを狙った。
「自分のミスは自分で取り返さないといけないと思って……。力み倒しました」
平凡なサードゴロ。大柄な4番打者は悠々アウトのタイミングで一塁ベースにヘッドスライディングした。泥だらけのユニホームでベンチに戻ると、屈託ない笑顔のダルビッシュ有が待ち構えていた。

相手エースが感じとった勝機の拡大
2004年8月17日の甲子園3回戦第3試合。試合は午後1時54分に始まった。直前の試合で横浜が明徳義塾との接戦を制した頃には、すでに薄暗い空から小雨が降り始めていた。天気予報によれば、夕方になるにつれてさらに天候は悪化するという。次の試合を戦う選手たちの多くは「中止だろうな」と早合点していた。そんな雰囲気をよそに、主催者サイドは試合開始に向けて粛々と準備を進めていた。
全ての写真を見る -4枚-プラン紹介
「雑誌+年額プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
「雑誌+年額プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
記事


