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「逃げ出すわけにはいかない」新井貴浩が抱くファンへの“申し訳なさ”と監督としての決意「目を凝らすと小さな萌芽がある」《連載:広島カープ「鼓動」》
8月上旬の晴れた日曜日、私は朝から新横浜へ向かっていた。新井貴浩に会うためだった。
早めのお盆休みを過ごす人々でごった返す構内は真っすぐに歩くこともままならない。ようやく駅前通りに出ると、むせ返るような熱気がアスファルトの上に溜まっていた。のろのろと歩く私の脇を次々と人が追い越していく。いつもに比べて足が前に進まないのは、人混みのためでも、不快な暑さのためでもなかった。
駅前のホテルから新井が出てきたのは午前10時過ぎだった。白いスポーツウェアに汗拭き用のタオルを首にかけている。
「歩くのなんて、久しぶりだな」
広島東洋カープの指揮官はそう言うと、湿気で白みがかった空を眩しそうに見上げた。
これまでの多くのプロ野球監督がそうであったように、新井にも朝、散歩に出る習慣がある。私の知る限り、指揮官という立場にいる人が歩く理由は様々で、頭をまっさらにしたいからだという人がいれば、単に体調管理だという人もいた。いずれにしても、監督は毎日のように決断を迫られ、勝敗の責任を背負い、それでいてベンチではどんな時も泰然としていなければならない。だからこそ、静かに自分と向き合う朝が必要なのかもしれない。そして、新井の場合は頭を空っぽにするというより、むしろ考えるために歩くのだという。
「散歩していても、何をしていても、どうしても野球のことは浮かんでくる。消そうと思っても消せない。だから、考えながら歩いているかな。今日のオーダーをどう組むか、相手はどう出てくるか、そういうこと考えるのは苦じゃないから」
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