2年ぶりの日本シリーズは4連敗で屈したが隙を突いた盗塁と大胆なシフトを敷いた守備などかつての大味な野球のイメージを覆した。その裏にはアナリストと名伯楽の働きがあった。(原題:[深層レポート]横浜DeNAベイスターズ「及ばなかった守備走塁改革」)
実はシミュレーション通りだった。ほんの半年前まで味方だった捕手のミットが1、2秒ほど止まる。すると、DeNA一塁走者の三森大貴はまるで忍者のようにスルリスルリと走り出した。ディレードスチールが成功した瞬間、一軍走塁アナリストの田上健一は東京都内の自宅で思わず「よしっ!」と声を張り上げた。
貯金2のセ・リーグ3位vs.貯金42のパ・リーグ3連覇チーム。下馬評はソフトバンク有利が大勢を占めていた。いくらDeNAがクライマックスシリーズを6連勝で勝ち上がってきたとはいえ、相手は昨季の日本一軍団である。圧倒的不利が囁かれる中、田上は人知れず秘策を練っていた。
入団1年目の走塁アナリストは今季、試合前に各選手との個別ミーティングを開いていた。日本シリーズ第1戦の試合前はパソコンの画面越しに三森と向き合った。田上はインフルエンザを発症し、自宅待機を余儀なくされていた。それでも、どうしても分析結果を伝えておきたかったのである。ヒントを授けると、三森は静かに頷いた。
「やっぱりそうですよね。僕もチャンスがあるかなと思っていました」
38歳の田上はかつて阪神の俊足外野手だった。6年でユニホームを脱いだが、仲間内では癖盗みの達人として一目置かれていた。現役引退後はオリックスのスコアラー、データスタジアム社のアナリスト、野球YouTuberと異色の経歴を歩み、昨季は独立リーグ・愛媛の野手コーチとして“革命”を起こしていた。相手投手の癖を見抜き、走塁動作の解析も続け、チーム盗塁数を前年の64から153に激増させたのだ。
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photograph by Hideki Sugiyama
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