6年にわたり、原と落合はしのぎを削った。奇策、急襲、だまし討ち。中日があらゆる手を尽くし、打倒を目指した巨人とはいったいどんな敵軍だったのか。攻略に尽くした参謀と両監督を知る名手が証言する。
プレーボールを待つ東京ドーム、ホームベース後方では落合博満と原辰徳が向かい合っていた。カメラのレンズに囲まれながら、黒衣の審判団を介して、互いにスターティングメンバー表を交換する。
その瞬間、顔をしかめたのは原の方だった。
中日ドラゴンズのバッテリーチーフコーチ森繁和は、離れた場所からその様子を見つめていた。
《うちのメンバー表を見て、原監督も巨人のベンチにいたコーチやスコアラーも、がっくりしているのがわかったよ》
2007年10月18日、クライマックスシリーズ(CS)セカンドステージは、セ・リーグを制した読売ジャイアンツと2位中日の顔合わせとなった。日本シリーズ進出をかけた短期決戦の初戦、中日の先発ピッチャーは大方のメディアが予想していた右腕・山井大介ではなく、サウスポーの小笠原孝であった。その事実が原の顔色を変え、巨人ベンチを落胆させたのだった。
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photograph by Hideki Sugiyama