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「本当に私でいいんですか」高梨沙羅は4年前の“失格”のトラウマをいかに乗り越え、スキージャンプ混合団体銅メダルを掴んだのか「自分の中で一つピリオドを打てたかな」

2026/03/05
女子ジャンプの第一人者に柔らかな笑顔が戻った。北京五輪混合団体で失格になったあの日から続いた苦悩、トラウマ。4年前に囚われた彼女に寄り添い背中を押したのは――。(原題:[幸せな銅メダル]高梨沙羅「みんながいてくれたから」)

 けたたましく会場に響いていたボン・ジョヴィやコールドプレイの音楽は、すっかり鳴りやんでいた。明かりもほとんどが落とされ、ジャンプ台は夜の闇に眠るように佇んでいる。あらかたスタッフは撤収し、時刻はもうすぐ23時。混合団体を終えた高梨沙羅の話がようやく聞けたのは、そんなタイミングだった。

「ずっと団体戦って苦手で、たぶんこれからも苦手です。でも、みんながいてくれたから幸せな日にできましたし、自分の中で一つピリオドを打てたかなと思います」

 心を満たす安堵が表情を柔らかくさせている。そんな優しい笑顔で彼女は語り始めた。胸には銅メダルが輝いていた。

「チームの力、支えが背中を押してくれる」

 試合後にドーピング検査と会見があり、日本チームでも高梨の取材だけがひときわ遅く始まった。ただ、そのおかげで囲み取材はミックスゾーンの柵も何もない場所で行われた。静かな空間と自然な距離感。特別に声を張る必要もない。この日の彼女の言葉を聞くには、こんなシチュエーションが一番いいように感じられた。

「団体戦のメンバー入りは、最初は公式練習の前に言われていたんです。でも、すぐには返答できなくて、『本当に私でいいんですか』『まず練習を見てから考えてください。それからでも遅くないんじゃないですか』と言いました」

 3日前に行われた女子ノーマルヒルでは日本勢2番手となる13位。実績を踏まえてもメンバー選出は順当な流れだった。だが、前回大会の混合団体ではスーツ規定違反により失格となっている。その傷が癒えていない高梨は一度は返事をためらった。女子ヘッドコーチの金城芳樹は「やっぱりトラウマがあるので少し身構えてしまうところもある」と理解を示したものの、公式練習の結果を見ても判断は変わらなかった。

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photograph by Hiroyuki Nakamura

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