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「彼のお陰で結構いい監督になれた」ロバーツ監督も絶賛した山本由伸は日本人初サイ・ヤング賞の最短距離に「また一つ、レベルが上がった感じがします」
超満員のドジャースタジアムの中央に設置されたステージへ先頭で向かったのは、山本由伸だった。11月3日に行われた優勝パレード&祝勝イベント。青と白の紙吹雪が舞う中、山本は間違いなく、大歓声の中心にいた。ワールドシリーズ(WS)で3勝を挙げ、MVPに輝いた実績だけではない。第6戦に続き、連投で第7戦を締めくくったその気概を、ファンの誰もが「エース」として認めていた。
「今回は6戦目、7戦目と初めて2日連続で投げるということで、予想以上にプレッシャーはありましたけど、その分、喜びも大きいと思います」
大舞台での無類の勝負強さは、今季も健在だった。リーグ優勝決定シリーズの第2戦に続き、WS第2戦では、ポストシーズン(PS)としては24年ぶりとなる連続完投勝利を挙げた。そして最後は常識外れの連投で「胴上げ投手」となった。近年、特にPSでは先発投手の交代機が一段と早くなる傾向が進む中、歯を食いしばって最後まで投げ抜く山本の姿は、周囲に感動すら与えた。山本投入を決断したデーブ・ロバーツ監督は、「彼のお陰で私も結構いい監督になれた」と、新エースの男気に絶賛の言葉を惜しまなかった。シリーズ終了後、大谷翔平が、「由伸が世界一の投手だと、みんなが思っているんじゃないかと思います」と評したのも、決して身びいきには聞こえなかった。
メジャー2年目の今季、山本は投手陣の軸としての自覚を胸に、春季キャンプへ臨んだ。自己流のペースで慎重に調整する選手をよそに、ブルペン投球、ライブBP、オープン戦と、すべて一番乗りでメニューをこなした。右肩の腱板損傷で途中離脱した1年目の反省を生かし、リミッターを設定することなく、黙々とルーティンを繰り返した。
その結果、東京での開幕戦で今季のチーム1球目を投じ、WS第7戦で最終球を投げた投手となった。
「本当にやり切ったからこそ、今後の自分の成長につながるというか、また一つ、レベルが上がったような、そんな感じがします」
来季こそ、日本人初のサイ・ヤング賞へ――。その最短距離に、山本がいることは疑う余地がない。
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