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「ヘナロは短気ですぐ怒る。潤人は…」名王者ヘナロ・エルナンデスと中谷潤人は似ているのか――同じトレーナーに育てられた2人の秘話「『マシン』みたいなもんですよ」
自宅で寛ぎながらスマートフォンに目を落とした。画面の中で中谷潤人と西田凌佑が闘っている。
渡辺雄二はこまめにボクシングの試合をチェックするタイプではない。だが、2025年6月8日、この日は違った。バンタム級世界チャンピオン、しかも日本人同士の対決に好奇心が湧いた。振り返れば、これまで中谷の試合をきちんと見たことがなかった。
中谷がパンチを放つたび、体が前のめりになり、画面に釘付けになっていく。突如、33年前の世界初挑戦時の記憶が甦った。
これはヘナロじゃないか、俺が打たれたパンチと同じじゃないか。
中谷がヘナロ・エルナンデスに重なって見える。二人とも細身で手足が長い。その上、接近戦を好み、前の手でアッパーを放つ。ボディから顔面へと少し角度を入れて突き上げるアッパー2連発。あれはヘナロとまったく同じ打ち方だ。中谷のアッパーが左目の眼球の痛みを呼び起こす。右構えのヘナロを鏡合わせにすると、サウスポーの中谷になる。そんな感覚に陥った。
しばらく画面を見つめ、「ああ、そうか」と一人納得した。ヘナロも中谷もトレーナーは同じ、ルディ・エルナンデスだ。真似しているのか、研究させたのか。きっと、そうに違いない。接近戦でアッパーを連打する中谷の姿はヘナロの幻影のようだった。
通算41戦で敗れたのはデラホーヤとメイウェザーだけ
ヘナロ・エルナンデスは1990年代を賑わせた元WBA、WBC世界スーパーフェザー級チャンピオン。メキシコ系アメリカンで「チカニート」と呼ばれた。帝拳契約の外国人世界王者第1号となり、WBA王者として、竹田益朗、渡辺らを退け、8度の防衛に成功した。通算41戦で敗れたのはオスカー・デラホーヤとフロイド・メイウェザーだけ。引退後は帝拳USAの代表を務めたものの、がんを患い、2011年に45歳の若さで天に召された。
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