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【井上尚弥】「小型ボートが空母になった」元オリンピアン、世界王者トレーナー、ヘアスタイリストまで…『TEAM INOUE』の実像に迫る《大橋秀行会長らの証言》
井上尚弥のスパーリングはトレーナー陣の役割がはっきり決まっている。インターバル中、大きなタオルで井上をあおぐのが太田光亮、ヘッドギアをいったん外し、きれいにして再び装着するのが鈴木康弘。チーフの井上真吾はラウンド中とインターバルにアドバイスを送り、北野良がスマホで動画の撮影をする。
井上尚弥は偉大だ。日本が世界に誇るモンスターである。それでも井上は一人だけの力で強くなり、現在の地位を築いたかと言えばそうではないだろう。スパーリング一つとっても一人ではできないのだ。チームの強固なバックアップこそがモンスターの強さの源ではなかろうか。
全体を統括する大橋ジム会長の大橋秀行は「チーム力? 考えたことなかったなあ」とつぶやき、そしてこう続けた。
「まず、井上はたとえどんな小さなジムでも絶対にチャンピオンになれたと思う。とはいえね、ここまで周りからはそう見えないかもしれないけど、決して楽じゃなかったし、綱渡りもあった。本人が言うんです。『もし、同じことをやり直せと言われたら自信がない』って。そう考えると、試練を乗り越えることができたのはチーム力があったからかもしれないですね」

大橋の仕事はプロモーターとして対戦相手との交渉、会場の手配、配信元との打ち合わせ、スパーリング・パートナーの招へいなど多岐にわたる。難しい判断を求められる場面も多く、その都度、井上やチームの意見に耳を傾けながら決断を下してきた。
「ライトフライ級で初防衛(2014年9月)のあと、オプションがあって本当は2度目の防衛戦をするはずだった。井上は減量がきつかったけど、あと1試合ならやれると言った。でも、そのとき栄養士さんに『もう限界です』と止められて王座を返上したんです。その次のオマール・ナルバエス戦('14年12月)は、2階級上だし名前のある選手だから最初は私が断った。それを真吾さんと井上に話したら絶対に勝てるからやらしてくれと。すぐに電話し直して試合が決まった。スティーブン・フルトン戦('23年7月)の2カ月延期もそう。あの井上が『延期って無理ですよね』と聞いてきたからすぐに決断した。こういう臨機応変な対応も、ある意味チームワークだったんじゃないかな」
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