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「この完勝で隙がないことを示した」元世界王者2人に衝撃を与えた井上尚弥の“打たせずに打つ”究極のボクシング「行けないんです。怖いんだから」《京口紘人&岩佐亮佑W解説》
京口紘人の視点 一切隙を見せない究極のヒット&アウェー。
試合前から井上尚弥は「判定勝ちでもいい」と話していたが、予想はできなかった。今年7月に引退を表明した元世界2階級制覇王者の京口紘人は、同じ1993年生まれでプライベートでも親交のあるモンスターの戦いぶりに舌を巻いた。
「脱帽しました。僕は丁寧に削りながら終盤のラウンドにKOすると思っていたのですが、判定でもそれ以上のパフォーマンスでした。世界トップのムロジョン・アフマダリエフを相手に想像を超える完勝。これまでにあまり見せなかった戦い方で、いつも以上に多くの引き出しを使っていました」
前半から目を奪われたのは、距離の取り方である。重心は真ん中に置き、上体は少し後ろ寄り。前足は相手の前足近くで調整し、ジャブの差し合いで上回っていた。ここ最近の試合とは、明らかに違った。
「リスクを取ってKOを狙いに行っているときは、重心がもう少し前でした。今回は丁寧にポイントをピックアップしていく姿勢が、足のポジションからも見て取れました。半歩遠いようなイメージです」
距離が変われば、ディフェンスの方法が変わってくるのも必然。相手のパンチを受け止めるブロッキングよりも距離とボディワークで空振りを誘っていた。これがまた会場を盛り上げたのだ。5回終わりのインターバル中に鼻先ぎりぎりで相手のフックをかわすスロー映像がIGアリーナのモニターに流れたときには、1万6000人の観客からどよめきが起きた。

「バックステップとスウェーのあの技術は、誰にもマネできない芸当。1ラウンドの終盤からありましたよね。ミリ単位で調整していると思います。最初は少しヒヤヒヤしましたが、中盤以降は安心して眺めていました。あれができるのは、他の技術も完璧だからです。スウェーに頼りすぎると、距離を見誤ってもらってしまうので。それこそ、ぐっと伸びてくるパンチに対応できず、倒される選手を数多く見てきましたから。かわしたつもりでも当てられるんです」
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