「ここまでくるのが長くて……ホッとしました」
9月13日のIBF世界S・バンタム級タイトル戦で宿敵小國以載(ゆきのり)を6回TKOに破り、新チャンピオンになった岩佐亮佑が試合後に漏らした一言には、実感が籠っていた。
起伏の激しいボクサーの現役生活はしばしば人生に例えられる。時には、ひとつの試合そのものが人生の縮図となることがあるが、この夜の岩佐の試合がまさにそうだった。
1967年の沼田義明―小林弘戦以来35度目となる日本人同士の世界タイトル戦。高校時代に対戦して勝った相手、小國とはプロでもスパーリングを重ねた旧知の仲。しかし世界獲得レースでは小國に先を越され、指名挑戦者として迎えたのがこの一戦だった。
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photograph by KYODO