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「試合終盤で最も速い球を」ドラフト全体255位→サイ・ヤング賞…タリク・スクバルが乗り越えた‟大きな困難”《最強最速投手のルーツを探る》

2025/08/08
現在のメジャーで最も速い球を投げる先発投手だろう。今季は完封した試合のラストボールで165kmを記録。そんなサイ・ヤング賞投手にも故障に泣いた過去があった。(原題:[最強投手のルーツ]タリク・スクバル「英雄は危機を乗り越えて」)

 タリク・スクバルは、Xのアカウントに2016年2月4日の投稿をピン留めしている。

“Our struggles determine our successes. So choose your struggles wisely.”

 アメリカの著述家マーク・マンソンという人の言葉らしく、日本語では「我々の成功は、どんな困難と向き合うかによって決まる。だから、どんな困難に挑むのかは賢く選ぶべきだ」といったところだろうか。

 なぜ、この言葉をピン留めしているのかと聞いた。

「たぶんそのときはトミー・ジョン手術のリハビリ中で、その言葉がちょうど自分の心に響いたんだと思う。今でも日々の自分に当てはまる言葉だと思っている。誰の言葉かなんて全く知らないけど、兄の一人が送ってくれた」

 厳密にいうと、手術前に肘の問題を抱えながら投げていた時期に投稿したものだろう。

スカウトの評価は「化ければ儲けもの」

 スクバルは、2016年、シアトル大学2年生のとき、左肘の内側側副靭帯再建手術(トミー・ジョン手術)を受けた。'17年のシーズンは全休。その間のドラフトでダイヤモンドバックスから29巡目、全体862位で指名を受けたが、'18年シーズンも大学に残った。その年のドラフトでタイガースから9巡目、全体255位で指名された。'19年のMLB公式ホームぺージのスカウティングレポートには「特にコントロール面で不安定なパフォーマンスを示した。タイガースはスクバルに未開発のポテンシャルを見出し、9巡目で指名した」と書かれている。トッププロスペクトどころか、「化ければ儲けもの」の選手だった。

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photograph by Yukihito Taguchi

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