5月23日、両国国技館。
前日まで12戦全勝と勝ちっぱなしだった大の里が琴櫻を寄り切ると、この瞬間、2場所連続優勝が決まり、横綱昇進が確実となった。
溜まり、桟敷、椅子席を問わず観客から嵐のような歓声が湧きあがったが、国技館であれだけの歓声を聞いたことは、いまだかつてなかった。
第75代横綱、大の里泰輝。
横綱昇進までの所要13場所は、これまで輪島が持っていた21場所の記録を大きく塗り替え、日本出身の横綱は、稀勢の里――現在の師匠である二所ノ関親方――以来、実に8年ぶりの誕生となった。伝達式の口上では大関昇進の時と同じ四字熟語が使われた。
「横綱の地位を汚さぬよう稽古に精進し、唯一無二の横綱を目指します」
まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで出世の階段を上がったが、万事が順調ではなく、停滞局面はあったと振り返る。昨年の九州場所で大関に昇進してからのことだ。
「九州場所で9勝、初場所でも10勝止まりと、少し苦戦した場所が続きました。新大関の場所では巡業中に体調不良があり、自分なりには準備したつもりでも、思ったようにコンディションを整えられませんでした。いまだから言えますが、あの時は勝ち越した瞬間にホッとしました。これでカド番にならなくて済むと。大関は負け越しが続くと陥落する可能性がありますから」
年が改まって、初場所も10勝。入門以来、一気に番付を駆け上がってきた勢いが削がれていた。そんなとき、師匠から厳しい言葉をかけられたという。
全ての写真を見る -3枚-プラン紹介
「雑誌+年額プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
「雑誌+年額プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
この連載の記事を読む
記事


