#947
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【フィギュアスケート傑作選】「いつもの5倍は緊張しました」坂本花織17歳が戦った“魔物”とは何か?「壁があっても、当たっていくしかないです」《平昌五輪の裏側/2018年》

驚くべき成長を遂げ、辿り着いた夢の舞台。笑顔輝く17歳は、五輪の“魔物”にどう立ち向かったのか。(初出:Number947号 [魔物に勝った17歳]坂本花織「いつもの5倍は緊張しました」)

 2月23日、フィギュアスケート女子フリーの演技を終えると、坂本花織は言った。

「(いつもの大会の)5倍は緊張しました」

 ──五輪だからですか?

「ん? あー(笑)」

 一瞬戸惑ったあと、意味を理解したように笑顔を見せる。だが、その表情にはどこか消耗の跡が窺えた。オリンピックという舞台はやはり、特別なものだったのか。

 全日本選手権で会心の演技を見せて五輪代表切符をつかみ、四大陸選手権では初出場で優勝の快挙。今シーズン、著しい成長を遂げてきた坂本の足が止まったのは、平昌五輪での最初の試合となった、2月12日の団体戦女子フリーのときだった。

 冒頭の3回転フリップでバランスを崩し、予定していたコンビネーションジャンプも単発になった。滑り自体も勢いがなく、自己ベストを大きく下回る131.91点にとどまり、出場選手の中で最下位に沈んだ。

 リンクに立ったとき、足が震えているのが分かったと言う。

「頭の中に、オリンピックなんだという緊張があったかなと思います」

 代表に決まってから常に抱えていたプレッシャーに、抗することはできなかった。

「『ふふっ』と思って、気持ちが楽になりました」

 だが、2月21日、女子シングルのショートプログラムでは見違えるような動きを見せる。ジャンプをすべて後半に入れるチャレンジングな演技構成のもと、スピン、ステップと、流れるような滑りが戻った。最初のジャンプとなった3回転フリップ+3回転トウループでも、持ち味の高さと幅を見せつけ、高い加点を得る。

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photograph by Sunao Noto/JMPA

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