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「1998年の選択は正解だったのか?」グラスワンダーとエルコンドルパサー、的場均と日本ダービーの“if”を考える《インタビュー》

2025/05/23
(左)グラスワンダー(右)エルコンドルパサー
優駿たちが揃う1995年世代の中で、クラシック参戦を許されなかった2頭の外国産馬。もしも両者がダービーに出走していたら――。そんな幻のレースを夢想するほど競馬ファンが虜になったあの強さを、ともに鞍上で導いた名手が懐かしんだ。(原題:[主戦の回想]1998 グラスワンダー/エルコンドルパサー「どちらを選んでもきっと正解」)

「三強」の勢力図が描かれたダービーのひとつに'98年のレースがある。念願の初制覇を果たした武豊とスペシャルウィークのコンビは5馬身差で圧勝。ゴールシーンだけを切り取れば「一強」が際立ったものの、ライバルと目された芦毛の皐月賞馬セイウンスカイは秋の菊花賞で見事な大逃げを実らせて二冠制覇を達成し、雪辱を叶えた。世界的良血馬キングヘイローも2年後の春に高松宮記念を勝ち、種牡馬としても大きな足跡を残した。2頭が秘めていたポテンシャルを考えれば、「三強」の見立てが間違っていたとは思わない。

 さらにこの年の3歳世代には「あの馬が出ていれば」と思わせる大駒が他にも2頭いた。グラスワンダーとエルコンドルパサー。当時はまだ、ダービーの舞台から締め出されていた外国産馬である。

 グラスワンダーは3歳時から4歳時にかけて「グランプリ(有馬記念、宝塚記念)3連覇」を成し遂げ、2回にわたってスペシャルウィークを破った。日本の3歳馬として初めてジャパンCを勝った(3着スペシャルウィーク)エルコンドルパサーは翌年、長期の欧州遠征を敢行。伝統のGI・サンクルー大賞典を制し、凱旋門賞でも地元の雄モンジューの2着に食い下がった。「三強」と比べてもまったくヒケを取らなかった煌めく才能。それが開花していく過程で非常に大きな役割を果たしたのが、2頭の主戦を務めた的場均だった。

Keiji Ishikawa
Keiji Ishikawa

初めて跨った瞬間に衝撃を覚えた

 グラスワンダーはデビュー前の調教で初めて跨った瞬間に衝撃を覚えた。背中の感触、いわゆる乗り味がそれぐらい素晴らしかったのだ。性格も大人びていて古馬のような風格を感じたが、そこは経験値の低い2歳馬。デビュー当初はこんな理由で出遅れを繰り返した。

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photograph by JRA

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