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【究極の打撃論】イチローが“運命のセカンドゴロ”で見つけたもの「脳ミソで捉えるまでの球の見え方、体の使い方は完璧だった」《独占インタビュー/2000年》

ふーっ。
イチローと野球の話をすると、いつも大きなため息をつかされる。その意外さ、その難しさ、そしてこちらを見据えるその目の力強さ。緊張感あふれるやりとりの末につむぎ出される彼の言葉の中身は、実に奥深い。以前、イチローとこんな話をしたことがあった。
「バッティングを書くのは難しいね。ピッチングには明確な意図というものがあるけど、バッティングは体が反応するものだから、言葉に置き換えるのは難しいんだよなぁ」
すると、イチローはこう反論した。
「確かに、僕のバッティングを言葉にするのは難しい。感覚的なものだから、うまく表現できない。でも、バッティングにも意図はあるんですよ。準備をするまでの、目で見て、脳ミソで感じる部分というか……」
目で見て、脳ミソで感じる部分――このイチローの感覚を、言葉に置き換えてみたい。
「それはそれは苦しかったです」
イチローは、昨季まで6年連続で首位打者を独り占めにしてきた。しかし彼はずっと、こう言い続けていた。
「確かに結果は首位打者でしたが、自分ではちっとも満足できませんでした。だって’95年からの4年間は、バッティングにおいて自分は何をやりたいのかってことを探しながら、もがき苦しんできましたから。’94年の途中まではヒットなんて簡単に打てると思っていたけど、それがだんだん難しくなってきた。自分の中にはヒットを打てる感覚があるにもかかわらず、体が思うように動いてくれないんです。イメージはある、でもそれが表現できない。どうすればできるのかが、まったくわからない。自分の感覚では半分の力しか出せてない、そんな感じでしたからね。それはそれは苦しかったです」

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