パリの地で悲願のメダルを手に入れ、米ツアーでもアジア人最多記録を更新する10勝目に到達した。前シーズンの不振を払拭し、再び頂点を狙う立場に。ゴルフ界を牽引し続ける男が、充実の1年を振り返った。(原題:[再びメジャー制覇へ]松山英樹「技術をあきらめず、結果もあきらめず」)
写真撮影中のひとコマ。窓の外に視線を向けた松山英樹が「おっ!」という表情を見せた。何かと思えば、
「めっちゃ東京タワーが見えますね」
確かに向こうの青い空からこちらをのぞき込むように東京タワーがにょきっと顔をのぞかせている。そんな些細なことでほころぶ松山の顔を見ていると、「まあ、いい年でしたね」と語る2024年の充実ぶり、そこから得たというがこちらにも伝わってくるのだった。
1年前を思い返してみれば、当時の状況は楽観できるものではなかった。PGAツアー10年目は首の痛みなどに苦しめられ、ドライバーの飛距離が出ず、アイアンの距離感にも狂いが生じた。優勝はなく、ツアー最終戦出場も逃して、世界ランキングは'24年1月に11年ぶりにトップ50圏外に。10代から世界で活躍してきた松山も30代となり、このまま停滞、もしくは緩やかに下降線を描いてもおかしくはないように思えた。
ところが、2024年はそんな心配を吹き飛ばすような反転攻勢の年となった。PGAツアーで2勝を挙げて通算10勝に到達し、トップ10にも返り咲いた。パリ五輪では銅メダルを獲得。松山はまず「去年、この時期にゆっくりできたことが大きいんじゃないですか」と振り返り始めた。
「一度リフレッシュできたのはすごく大きかった」
'23年8月にPGAツアーのシーズンを終えた後、年内残りの4カ月で出場したのは2試合のみ。'24年1月のシーズンインまで、かつてないほどゆったりと過ごした。体の回復が第一の目的だったが、ハワイで新シーズンを迎えた時、松山は肉体だけでなく、精神的にも新鮮な気持ちでコースに向かえている自分に気づいた。
「やっぱり10年間の疲労の蓄積みたいなものがあったんでしょうね。これまで頑張ってきて……自分としては頑張ってる感はなかったんですけど、一度リフレッシュできたのはすごく大きかった」
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photograph by Asami Enomoto