日本人プロゴルファーの旗手として、10年にわたって世界の最前線で戦い続けてきた。すでに夢舞台での勝利も掴んだ。だが、理想を追求する日々にまだ終わりは見えない――。
不安は心を満たし、やがて遠ざかっていく。今度は自分を信じる思いが力強くみなぎってきて、それもまたいつしか弱々しくなって薄れていってしまう。
寄せては返す波のようなその揺れ動きは、PGAツアーという世界最高峰の舞台に身を置き続ける間、さまざまな周期で松山英樹の心の中で繰り返されてきたものだった。
10年――。
松山がシード権を持つメンバーとなり、アメリカを主戦場とするようになってからそれだけの年月が経った。
かつて丸山茂樹も2000年から9年にわたってシード権を維持し、PGAツアーでプレーし続けた。松山にとって『10』という数字は、尊敬する丸山の数字を塗り替える日本人未到の地点であり、参戦当初から「どこかでやれる自信は持っていた」と静かに見据えていた目標でもあった。
節目のシーズンを戦い終えた今、その達成感について尋ねると、そこにも松山の相反する思いが交錯するのだった。
「二つの見方に分かれますね。『自分ならできる』と考える立場で評価をすると、本来できたはずのことが10%、15%しか達成できていないということになる。でも『自分にはできないかもしれない』という方の立場で考えたときには100点をあげられるなと思います」
プロ1年目の2013年は国内で賞金王を獲得する一方、PGAツアーにもスポット参戦して翌年からのシード権を手にした。フル参戦初年度の'14年には日本人最年少での初優勝。何人もの日本人が跳ね返されてきた壁を瞬く間に乗り越え、ツアーでの地歩を固めていった。
特製トートバッグ付き!
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
photograph by Getty Images