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「捕手用の防具を叩きつけ…」「監督室の前は渋滞」岡田タイガース“最後の日”に何が起こっていたのか?【証言:岩崎優、梅野隆太郎、高橋遥人、糸原健斗】
梅野隆太郎はその時、捕手用のレガースを両足に装着し始めていた。
2回裏1死から痛烈なライナーが二直に終わり、歯を食いしばりながら一塁ベンチに戻った。3点ビハインドを背負ったとはいえ、まだ試合は序盤。いかにゲームを立て直すか。再び脳をフル稼働させに入ったタイミングで、嶋田宗彦バッテリーコーチから声をかけられた。
「リュウ、代わるから」
先発の高橋遥人は2回終了時点で4失点。それにしても早い仕掛けだと感じた。
「次のピッチャー、誰っすか?」
何げなく尋ねた。すると担当コーチは申し訳なさそうに表情を曇らせた。
「いや、リュウが代わるらしいわ」
33歳の正捕手格は「えっ……」と目を見開いた後、二の句を継げなかった。
「それはもう……あの瞬間は自分自身へのイラ立ちが頂点に達しました。捕手って、それまでどれだけ頑張っていても、1試合ダメだったら失敗の烙印を押される仕事なので。それが集大成となるかもしれない日に訪れてしまったわけですから」
顔面を紅潮させ、ベンチ裏のミラールームに駆け込んだ。誰もいない空間。早々に役目を終えた捕手用の防具を強くたたきつけた。「バンッ」と衝撃音が響き渡った瞬間、野手最年長の1人は我に返った。
〈表で腹を立てていては雰囲気が悪くなる。もう声を出し続けるしかない〉
一瞬だけ芽生えたエゴをすぐさま消し去り、何食わぬ顔でベンチに戻った。
10月13日、秋晴れの甲子園。
DeNAとのクライマックスシリーズ(CS)・ファーストステージ2戦目が始まる直前、4万2646人の大観衆で埋め尽くされた聖地はどこか落ち着きを失っていた。空には澄み切った水色が広がっているというのに、阪神ベンチ内の空気も透明度100%とは言いがたかった。
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