たった一つしかない「正捕手」の座を争ってきた二人。梅野の背中を追いながら、坂本は着実に力をつけていく。だが優勝争いの最中、梅野は不運な負傷で戦線を離脱。重圧を一身に背負う後輩を見つめる、先輩の想いとは。
確かにあの3日間、坂本誠志郎は珍しく精彩を欠いていた。うだるような蒸し暑さの中、本来の落ち着きを失っているようにも映った。本人の言葉を借りれば「気持ち悪さ」を抱えていたのだという。8月15日から始まった2位広島との敵地ナイター3連戦の話だ。
すべての試合で先発マスクをかぶったものの、チームは約1カ月ぶりにカード負け越しを食らった。初戦は俊足ぞろいの若鯉軍団に4盗塁を許し、3点リードから逆転負け。3戦目は6回2死満塁でストライクボールの直球を捕逸して完封負け。常に冷静沈着な男らしくない「あたふた」の原因は、決して真夏の熱帯夜ではなかった。
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photograph by Hideki Sugiyama / Takuya Sugiyama