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「57秒4。速っ!」イクイノックスvs.パンサラッサ、名勝負はいかに生まれたか? ルメールと吉田豊が“2022年天皇賞・秋”を振り返る「ほんとうに一瞬で…」

2024/10/26
2022年天皇賞・秋で大逃げしたパンサラッサ(奥)をイクイノックスが差し切った
歴史的な大逃げによる勝利が、目の前に迫っていた。のちに世界へ轟く脚音を聞いたのは、その時だった。東京競馬場の6万人を超える大観衆を熱狂させた逃走と追走の2000mの真実を、主役2人が明かす。(原題:[名勝負ドキュメント]2022年 天皇賞・秋 イクイノックス&ルメールvs. パンサラッサ&吉田豊「見えざる逃走劇」)

 クリストフ・ルメールが天皇賞の映像を見ている。実況が1000mのラップタイムを告げると、目を丸くして――ほんとうに大きな目を見開いて――言った。

「57秒4。速っ!(笑)」

 あのレースでは、それだけパンサラッサの大逃げが衝撃的だったわけだが、映像を見終えたルメールは、満足げに言った。

「いい思い出ですね。神騎乗です(笑)」

 2022年10月30日、天皇賞・秋はイクイノックスにとってはじめてのGI優勝となった。それがルメール自身にとって「いい思い出」なのだが、「イクイノックスは最初から、すごく特別な馬だと思いました」と言った。

「残念ながら、皐月賞で負けて、ダービーで負けて、絶対にGIに勝たないといけなかったから、天皇賞は勝ってよかった。イクイノックスの強さを見せました。だから嬉しかった。やっと勝ったって」

35年ぶり天皇賞・秋逃げ切りをめざしたパンサラッサ(右端)だが、イクイノックス(青帽左)が上がり3F32秒7で差し切った Photostud
35年ぶり天皇賞・秋逃げ切りをめざしたパンサラッサ(右端)だが、イクイノックス(青帽左)が上がり3F32秒7で差し切った Photostud

キタサンブラックとおなじで、レースごとに良くなると予想した。

 ドウデュースの2着に負けたダービーで、イクイノックスは左前脚にダメージを負った。それから休養し、天皇賞・秋は5カ月ぶりのレースになったが、脚は完治し、馬の状態は良くなっていたという。

「この馬は秋から良くなると思っていましたね。春の段階ではまだ大人じゃなかった。キタサンブラックの産駒でしたので、キタサンブラックとおなじで、レースごとに良くなってくると予想していて。天皇賞の2週間前に美浦トレーニングセンターで乗ってきました。フットワークとか、馬の状態は良かったですね。休み明けでしたので、まだトップコンディションではなかったけど、天皇賞でいいレースをするためには十分でした」

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photograph by JRA

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