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「そうか、最後はライオンズなのか」松坂大輔、ドラゴンズ2年目で繰り返された悪夢と「家に帰ってきた」感覚〜連載「怪物秘録」第52回〜

2024/09/25
カムバック賞を受賞して迎えた翌'19年シーズン、悲劇はキャンプ中に起こった。リハビリを経ても戻らない肩の状態に松坂の心は徐々に疲弊していく。

 ドラゴンズでの2年目、松坂大輔は背番号を99から愛着のある18に変更、開幕から中6日でのローテーション入りを視野に入れていた。しかし北谷キャンプの序盤、ブルペンから球場へ移動する際、選手の動線の両側に居並ぶファンの一人に右腕を引っ張られてしまう。このとき、右肩に違和感を覚えた松坂はその後、ノースローでの調整を余儀なくされてしまった。

◆◆◆

 腕を引っ張られたというより、腕が引っ掛かったのかな。ファンの人が伸ばした手が僕の腕に届いて、何かが引っ掛かった感じがしたんです。だから腕を抜こうとしたら、その瞬間、グッと後ろに持っていかれた感じがして……腕を握られていたのか、袖口を引っ張られたのか、そこは僕には見えていなかったのでよくわかりません。メインの球場へ移動する途中でしたが、「サイン下さい」と言いながらユニフォームやシャツを引っ張られるのは珍しいことではありませんでした。そういう心情は理解できますが、どんなに気をつけていても腕を引っ張られたら肩は抜けちゃいます。

「ああ、またここからか」絶望的な気持ちに。

 その前年、右肩の状態がよくなって一軍で投げられるようになっていたとは言っても、脆い肩であることに変わりはありませんでした。いろいろと強化はしてきたつもりでしたが、歩いているときでしたし、力を入れていたわけではなかったので、簡単に壊れちゃったのかもしれません。感覚的には(2008年に)オークランドで足を滑らせて手すりをつかんだときに肩の関節がズレてしまった、あの感覚に近いものがありました。かかった負荷はオークランドのときのほうが大きかったと思いますが、北谷での僕は力を入れて肩を締めていたわけではなかったので、軽い力で引っ張られただけで抜けちゃったんでしょう。脱力していた分、肩が対処し切れなかったのか、すごくイヤな感じがしたのでトレーナーに話して病院に行ったら、肩の関節部分が内出血しているという診断でした。それが投げることにどんな影響を及ぼすのかはわかりませんでしたが、よくない状態だということは感じていました。ホークスのときの投げられない状態に近い感じで何をしても痛くて、ああ、またここからか、と絶望的な気持ちになったことを覚えています。

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photograph by Kiichi Matsumoto

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