その仕草は、杉内俊哉を思い起こさせた。3月4日のオープン戦で先発したドラゴンズの松坂大輔は、マウンドの上で何度も何度も右腕を高々と上げてからセットポジションに入っていた。試合後の囲み取材でそのことについて訊かれた松坂は、こう答えた。
「あれはやったり、やらなかったり、大きく動かしたいなと思うから出る動作です」
大きく動かしたい?
それは本音ではないと思った。血行障害を抱える杉内は、腕を振ったことによって指先にたまる血液を流すイメージを持つために、左腕を上げていた。松坂もまた、右肩痛の再発に対する不安の裏返しから出た動作であり、だから思わず本音を封印してしまったのではないだろうか。それを確かめるために本人にもう一度、同じ質問をぶつけてみた。
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photograph by KYODO