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【実家でインタビュー】日本代表・中村敬斗が振り返る《11歳「やめたい」と泣いた日》「あのまま続けていたら、今の自分はいない」

2024/07/12
実家のリビングにはF1好きの祖父母が遺したセナの絵と中村のユニフォームが並ぶ
昨年3月の日本代表デビューから10試合で8得点。破竹の勢いでゴールを量産し、人気も存在感も目下急上昇中の若き感覚派ウィンガーにとって人生最大の転機は、11歳の時に流した涙だった。(原題:[新星のターニングポイント]4 中村敬斗「『やめたい』と泣いた日」)

 質問に対する返答のテンポがあまりにもリズミカルで軽快だから、対話の劣勢を悟って思わずニヤつき、逃げの質問で踊り場を作ろうとしてしまった。

「ところで、頭の回転、速くない?」

 実家のソファにゆったりと座る中村敬斗は、「いやいやいや」と照れくさそうに髪をかき上げ、それからしっかりと笑った。

「それは真逆っす。頭のキレはぜんぜんです。全くありません。だって俺、人から見ると天然らしくて。自覚はないんですけどね。海外の人とコミュニケーションを取るのは得意だし、どこに行ってもそういう感じでチームメートと仲良くなっているので、そのままでいいかなって」

自分がブレイクしているという感覚は全然ない。

 今、サッカー日本代表で“誰よりも点を取りそうな男”は、ピッチの内外で「面白いヤツ」と評判である。

 ピッチ内では主に2列目の左サイドにポジションを取る。世界的なトレンドに倣って日本代表においても多士済々の激戦区だが、そこで横一線のレギュラー争いに挑めるほどの確かな能力がある。

 何しろ、とにかくよく点を取る。

 リオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドのような異能がいない普通の世界は、いつでもどこでも得点力不足に悩まされている。流行りの分析指標『xG(ゴール期待値)』を高められる個の存在は極めて貴重だ。だからこそ、中村を見る無数の眼はワクワク感に満ち溢れているのだが、天然の件と同様、本人にそこまでの自覚はない。

「絶対に生き残ってやろうという気持ちはあるけど、自分がブレイクしているという感覚はぜんぜんなくて。日本代表は結果を残し続けなきゃいけない場所。基本的には定着という考え方が通用しないと思うので、そういう意味では自分のゴールが続いたことは嬉しかったですけど……まあ、そうは言っても、ラッキーゴールも多かったですからね」

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photograph by Atsushi Kondo

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