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「I want to meet Arsene Wenger」1通のFAXを頼りにアーセナルへ…中西哲生が見た名将ベンゲルの内側《日本人初潜入レポート2001年》
大きな黒い門はゆっくりと開いた――名古屋グランパス時代のかつての師の招きにより、関係者以外は足を踏み入れることが許されない名将の聖域に筆者が潜入、元Jリーガーならではの視点でアーセナルの秘密を体験し、分析した。(初出:Number517号 元Jリーガーの極秘練習見聞録 アーセナル「ベンゲルイズムの内側」)
“I want to meet Arsene Wenger”
門の横のインターホンから聞こえる声に僕はこう答えた。
“Danger”(危険)と書かれた大きな黒い門の前で、僕と平野孝は少し考えていた。本当にここがアーセナルの練習場で、ベンゲルが居るのか、それさえも分からなかった。
しかしそれから5時間後、僕と平野は大きな安心感を胸に、同じ場所をアーセナル関係者の車で立ち去ったのだ。
「ベンゲルと会う約束はしているのか?」開かれた門の中へ
2001年1月5日、朝の9時過ぎ、アーセナルの練習場へタクシーで向かった。しかし、グラウンドは見えるが入り口がさっぱり分からない。歩いて探すうちに、やっと件(くだん)の練習場の門らしきところまでたどり着いた。そして恐る恐るインターホンを押したのだ。
「アーセン・ベンゲルに会いたい」
「君は誰だ?」
少しなまった英語が返ってきた。
「日本から来たプロサッカー選手で、名前はナカニシテツオとヒラノタカシだ」
「ベンゲルと会う約束はしているのか?」
「している。そのファックスも持っている」
「分かった、開けるよ」
大きな黒い門はゆっくりと開いた。そこから歩いていくと、突如近代的で美しい建物が姿を現わした。徐々に近づくと、ポールの上でアーセナルの旗が風になびいていた――。
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