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「高1でスポイラ表紙、高2で中退し短大へ」“選ばれし者”ブライス・ハーパーの野球人生を彩る「伝説」を追う《16歳時の目標が「殿堂入り」》

2024/06/29
2015年、2021年と2度のMVPを受賞しているハーパー
MVP2度、本塁打王1度の実績以上にとにかく大事な場面での勝負強さが鮮烈だ。天才少年がスーパースターの階段を駆け上がる、その過程で乗り越えてきた重圧とは。(原題:[ルーツに迫る]ブライス・ハーパー「“選ばれし者”の伝説」)

「左中間にかっ飛ばした! 飛んでいく! ハーパーの一世一代の一発だ!」

 全米に中継の実況が響いた。

 2022年10月23日、ナショナル・リーグ優勝決定シリーズ第5戦。パドレスを相手に王手を掛けていたフィラデルフィア・フィリーズの選手が、1点ビハインドの8回裏に逆転2ランを放った。そのまま4対3で勝ち、フィリーズは2009年以来、13年ぶりのワールドシリーズ進出を決めた。

 打ったのは主砲ブライス・ハーパー。当時30歳になったばかりだった。その一発などの活躍で、リーグ優勝決定シリーズのMVPに選出された。

 結局、この年はワールドシリーズでアストロズに敗れ、世界一には惜しくも届かなかった。

 しかし今季、またしてもハーパーがフィリーズを秋の戦いへ導こうとしている。6月20日時点で本塁打(17)、打点(48)、四球(46)、OPS(.930)の部門でリーグトップ10に入る。フィリーズはドジャースより勝利数が3勝多く、ナ・リーグ全体1位で独走している。3度目のリーグMVPを目指すハーパーの勝負強さは、メジャーリーグファンの誰もが知るところだ。

2022年ナ・リーグ優勝決定シリーズの本塁打 Getty Images
2022年ナ・リーグ優勝決定シリーズの本塁打 Getty Images

 ただ、不思議なことがある。2年前の逆転ホームランのシーンだ。

 本拠地のシチズンズ・バンク・パークの満員の大観衆や、一塁側のフィリーズベンチの全員が跳ねたり、踊りだしたり、喜びを隠せないなか、ハーパーは淡々とベースを回っていた。あれだけ重圧のかかる場面で“一世一代の一発”を放ちながら、なぜ、派手なガッツポーズをせず、無表情を保ちながら塁を回ることができたのか。

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photograph by Getty Images

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