ベストゲーム①2010.6.14 FIFA World Cup South Africa――Japan vs. Cameroon
「日本代表にとっても、自分にとっても、世界が大きく変わった試合です」
長谷部誠がそう振り返るのが2010年6月14日、南アフリカW杯初戦の日本対カメルーン戦だ。当時、岡田武史率いる日本代表は5月24日に埼玉スタジアムで行われた韓国との壮行試合に0対2で完敗し、大きな批判にさらされていた。
いったい自分に何ができるのか、ずっと考えていた。
「スタジアムで厳しいブーイングを受けましたし、岡田さんが試合後に進退伺いをしていたことを知りました。正直、あのときは誰も日本代表に期待していなかったですよね。そんな中、合宿先のスイスへ移動してから僕がゲームキャプテンに任命された。それでも悪い流れを断ち切れず、イングランドとコートジボワールとの親善試合に連敗し、『ゲームキャプテンを代えても何も変わらないじゃないか』という空気が漂い始めた。いったい自分に何ができるのか、ずっとホテルの部屋で考えていました」
当時26歳。のちに8年にわたって日本代表でキャプテンを務めた長谷部も、まだ組織の危機を整える域には達していなかった。
欧州でプレーする日本人選手が少ない時代で、選手の格も強豪国とは差があった。
「そのときに海外でプレーしていたのはグルノーブルの松井大輔さん、CSKAモスクワの本田圭佑、カターニアの森本貴幸、ヴォルフスブルクの僕という4人だけでした。中村俊輔さんら海外経験者を含めても8人のみ。一方、カメルーンにはインテルのエトーやアーセナルのA・ソングといった、ワールドクラスのスターがいた。今ではどんな国とやっても『ああ、あの選手ね』と距離感がつかめますが、まだ当時は『あ、エトーだ! ワォ』という感じでした。コイントスのとき、『俺、エトーと握手しちゃったよ!』と思ったくらいです。もちろん、そういう浮ついた気持ちは一切バレないようにしましたけどね」
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています