「今日は自尊心の強い自分で話をしていきます」謙虚な調整型リーダー。そんなイメージを纏う男が、そう切り出し、己の過去、現在、未来を語りだした。ドイツで14季目を闘う37歳、その独自の哲学に迫る。
コロナ禍の街を眩い陽光が照らしている。ドイツの春はまだ肌寒いが、辺りを見渡すと、すでに街路樹は新緑に染まっていた。移ろいゆく時の中で、あらゆる物事には確実に変化が生じている。
ブンデスリーガのアイントラハト・フランクフルトに所属する長谷部誠は今春、クラブと1年の契約延長に合意した。チームは来季のチャンピオンズリーグ出場権を得られる順位を維持し、その環境下に37歳の彼が敢然と身を置いている。
今の長谷部が担う主なポジションはボランチである。かつて主戦場としたその場所で、彼は新たなる能力を覚醒させた。
「今季のボランチでのプレーパフォーマンスは自分でも驚いているんですよね。監督がまた、僕を中盤のボランチで起用するとは思っていなかったし、それに加えて自分自身がそこで想像以上のパフォーマンスを出せている両方の驚きがあります」
そう答えた刹那に、彼は突然こう話を振った。
「今までの僕がパブリックの場で話してきたような内容を、ここでまた話すのもどうかと思うんですよね。人って、それぞれに表と裏を備え持っていて、僕の中にも2人の自分がいる。大前提として、常に謙虚であることは大事だと思っています。だから僕も外に何かを発信する際に穏やかな言葉を選ぶことが多いです。だけど、それと同じくらい、僕には強い自尊心があるとも思っている。今日は“そっちの自分”で話していきたいと思います」
僕の何が突出しているのかと考える
「自尊心」という言葉に強いメッセージ性を感じた。確固たるキャリアを築き上げた彼に、今の率直な思いを赤裸々に語ってもらいたくなった。
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photograph by Ryu Voelkel