昨年、日本競泳界初となる五輪5大会連続出場への挑戦を宣言し、この夏、8大会連続で世界水泳の舞台に挑む33歳のベテラン。長くトップレベルで世界と戦う彼が、今も泳ぎ続ける理由とは――。
「喜びも葛藤もいろいろ経験してきて、1周……いや、もう2周ぐらいしたかもしれないですね(笑)。若い頃は現役を続けるのはロンドン五輪かリオ五輪あたりまでかなと考えていました。それが、まさか30歳を超えても続けられているなんて。大きな怪我もなく、この年齢まで続けられていること自体、本当にありがたいことです」
2006年、入江陵介は高校2年生で日本代表入りを果たした。あれから17年。「本当にあっという間だった」と回想する競泳人生は、「自分がもっと若かったら、もっと長くいたいと思える場所ですね」と、18年目に入った今、充実の時を迎えている。
今年1月の誕生日で33歳。年齢的には水泳界では大ベテランと言われる世代となった。初めて出場した北京五輪をともに戦った選手はもちろん一人もいない。北島康介や松田丈志、自分よりも年下の萩野公介ら、選手が引退していく姿も幾度も目にしてきた。だが、入江は今なお背泳ぎの第一人者として泳ぎ続ける。
「若い頃よりも疲れやすいし、疲れも取れにくくなっていて、栄養のことや日々の生活で考えることも多いですね。ただ、その分、知識も増えました。もちろん、練習はしんどいですけど、毎日が楽しいですよ。それは長く競技を続けてきたからこそ感じられる感覚なのかもしれません」
常にトップランナーとして走り続けてきたという自負。だが、その道のりすべてが順風満帆だったわけではない。水泳を辞めたいと思うような挫折や、『引退』に気持ちが大きく揺れることは幾度もあった。
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photograph by Wataru Sato