今夏、31歳でのオリンピックデビューは、柔道日本女子では歴代最年長記録となる。夢舞台にたどりつくまでの道のりは、角田夏実にとって決して「簡単なものではなかった」。柔道48kg級の遅咲きの女王はパリ五輪開会式翌日の7月27日に運命の一戦を控える。
高卒時には製菓の専門学校に進むことも視野に。
「これ以上やっても私には無理なのかな」
中学、高校時代には柔道の全国大会に出場を果たすも、高校2年でインターハイ3位、3年は同5位と主要大会で優勝するには至らなかった。高校卒業後は柔道を辞めて好きなお菓子作りを仕事にしたいと、専門学校に進むことを視野に入れていた。
「すべて出し切った感もあったし、自分に限界も感じていました。だから根本にもう柔道はやりたくないという気持ちがあって。じゃあ私に何ができるんだろうと考えたとき、そういう道もいいかなと思ったんです」
結局、大学に進学することになり、柔道を続けた。選んだのは、柔道の強化に乗り出したばかりの東京学芸大学。“柔道を楽しめればいいか”、そんなつもりで入部した。
大学の柔道部の練習は選手主体で、それが角田の個性を伸ばしてくれたという。
「こうでなければいけないという固定観念がなかったんです。もともと寝技が好きだし得意だったんですが、大学ではいいところを伸ばそうとしてくれました。自分の道を頭ごなしにシャットアウトせず、一緒に考えながら研究してくれて。それが今につながっているのかなと思います」
相手を引き込みながら自らの背中を畳につけ、相手を足ではね飛ばす豪快な巴投げは角田の得意技だ。たとえ投げが決まらなくても関節技で一本を取れるのも大きな強み。この投げ技と寝技のコンビネーションのレパートリーの多さが最強の武器になっている。相手の腕を足で挟む必殺技・腕ひしぎ十字固めは代名詞の一つともいえる。
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