「我慢強さが接戦になればなるほど発揮される。そこが強みです」
3年前、柔道男子日本代表の井上康生監督(当時)がある選手のことを評した言葉である。
その人、ウルフアロンは2月、100kg級のパリ五輪日本代表の座を掴んだ。激戦となった代表争いでは井上前監督の言葉通り、追い込まれながらも勝負強さを発揮していた。
2021年の東京五輪で金メダルを獲得し、'19年の全日本選手権、'17年と'19年の世界選手権を合わせて、史上8人目の柔道三冠を達成。一躍、時の人となった。
しかし、頂点を極めたどの競技の、どのアスリートでも感じる達成感に浸っていたウルフは、すぐに次の目標に目を向けることができなかった。
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photograph by AFLO