21年ぶりに戴冠した100kg級金メダリストは、団体戦の無念を糧として、早くも“次”に目を向けていた。
個性を存分に発揮した。
「僕の持ち味は、しぶとい柔道です」
その言葉を見事に体現して、ウルフアロンは柔道男子100kg級の頂点に駆け上がった。
準決勝の相手は世界ランク1位のバルラム・リパルテリアニ(ジョージア)。残り1分を前に、大内刈で技ありを奪って勝利する。迎えた決勝で対峙したのは、チョ・グハム(韓国)。2019年の世界選手権準々決勝で敗れている。低い姿勢からの背負い投げを武器とするチョは、積極的に前に出るスタイルのウルフにとっては、出たタイミングで担がれやすい。相性が悪く、「苦手」と公言する相手だった。
でもこの日はそう感じさせなかった。自身の釣り手の位置に応じて距離をとったり、あるいは接近して上手に間合いをとりながら、相手に技をかけさせない。
ゴールデンスコアに入ると、チョが消耗していくさまが明確になる。そうなると無尽蔵のスタミナを持つウルフのものだ。延長も5分が過ぎ、ついに大内刈が決まる。
「最初の4分間も、ゴールデンスコアに入ってからも、ずっと我慢、我慢でした。片手でもいいから技をかけることを意識しながら、少しずつでも相手のスタミナを削って試合をしようと考えていました」
大会へ向けて万全ではなかった。'18年1月に左膝を手術し、'19年12月には右膝にもメスを入れた。開幕が1年延期になる中、懸命にリハビリしつつ練習に取り組んで7月29日の試合を迎えたが、前日には両膝に痛み止めを打っていた。
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photograph by Asahi Shimbun