スマートフォンの待ち受け画面はエッフェル塔をバックにした五輪マーク。毎朝その写真を観るたびに、レスリング女子フリースタイル53kg級日本代表の藤波朱理(日本体育大)は「今日もやるぞ」と気持ちを奮い立たせている。
「わたしはイメージをすごく大事にしているので、パリで自分が優勝する姿を想像しながら練習しています。勝てたら、間違いなく今まで自分が感じた中で一番幸せな気分になるんじゃないですかね」
東京オリンピックを前に燃え上がった心の炎。
前回の東京オリンピックの開催時、藤波はまだ三重県いなべ市の高校生で、女子レスリングの試合も自宅でテレビ観戦していた。同じ階級の向田(現姓・志土地)真優(ジェイテクト)が優勝を決めると、藤波は強い覚悟を帯びた口調で宣言した。
「オリンピックは憧れの舞台ではない。自分もオリンピックのマットに立つ」
そのとき、彼女の心の中では炎が燃え上がっていた。スイッチが入った瞬間だった。
「もちろん、わたしはその前のリオデジャネイロやロンドンのオリンピックも観ているけど、『すごいなぁ。自分もこの舞台に立てたらいいよな』くらいの願望でしかなかった。でも東京オリンピックのときには全く違う感情が湧き出てきた」
その後の活躍は目覚ましかった。2021年10月、ノルウェーで開催された世界選手権では17歳10カ月で優勝し、女子レスリングが五輪種目になってからの史上最年少記録を更新した。昨年6月の全日本選抜選手権では東京五輪の金メダリストである志土地と初めて顔を合わせたが、堂々フォール勝ち。世代交代を印象づけるとともに、パリ五輪の出場権がかかる世界選手権への出場切符を手にした。
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