スマイルこそが代名詞。だが、その笑顔の向こう側には日韓両国の狭間で悩み、自らのプレーに苦悩する姿があった。日本での最後の試合を終えた彼女に胸の内を聞いた。
「思っていたより泣きませんでした。たくさんの感動をもらいましたし、これまでのしんどかったこともすべて忘れて、幸せな記憶だけが残りそうです」
10月、日本ツアーでの最後のプレーを終えたイ・ボミは、すべてが終わった翌日の朝、そう言って笑っていた。
3月の開幕戦の前、今季限りで日本ツアーから引退することを発表した。
10年以上戦い続けた日本での最後のシーズンを迎えたが、出場する試合では上位争いはおろか、一度も予選を通過することができず、トレードマークの笑顔は影をひそめたまま。「今が日本に来てから一番辛い……」と弱音を吐くこともあった。
引退試合となった『NOBUTA GROUPマスターズGCレディース』でも全盛期のような輝きを見せることはできなかった。それでもイ・ボミの最後のプレーを一目見ようと、初日の1番ホールは大ギャラリーでごったがえした。会場で販売されていた応援グッズは彼女の好きなピンク色に統一され、同組で回った上田桃子と小祝さくらもピンク色のウェアを着て最後の舞台に花を添えた。2日目のラウンド後に行われた関係者による引退セレモニーには50人以上の選手がピンクのTシャツを着て参加した。
「いまも本当に終わったのか実感がないんです。最後にファンの前で挨拶をしたときは引退が早すぎたんじゃないかと考えたりもしました。でも、たくさんの方が迎えてくれて、幸せな選手生活を送ったのだなとしみじみ感じました」
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photograph by Naoki Muramatsu