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「僕はファンタジスタ系ではない」松田力也が右足で証明した“10番”の価値<全4試合で驚異のキック成功率95%>

2023/10/13
テストマッチでの不振から一転、10番を託された男が本大会の大事な初戦でプレースキックを決め続けた。控えに甘んじた前回大会以後の奮闘の日々は、難しい役割を担う司令塔をいかに成長させたのか。

 原点は4年前のW杯日本大会に遡る。

 松田力也は東京スタジアムで行われた準々決勝の南アフリカ戦の舞台に立った。

「チームとしての達成感はありましたよ。それでも10番では出場できなくて……。『'23年は絶対に先発だ』という思いを持ってやってきました」

 この4年間、松田はスタンドオフ(SO)としての自らの価値を証明してきた。「日本代表の持ち味は、対戦相手によって戦術を変えられることです」と松田自身が語っているが、それだけ司令塔であるSOには多彩なスキル、視野、そしてなにより戦術理解が必要とされる。2021年秋のテストマッチシリーズでは4試合中3試合の先発SOを務め、ジェイミー・ジャパンの中心に松田は座った。

 しかし、'22年5月のリーグワンでの試合で左膝前十字靭帯断裂の大怪我を負ってしまい、'22年の代表活動には参加できなかった。松田個人にとっても、ジェイミー・ジャパンにとっても痛すぎる離脱だった。

「手術するか、保存療法にするか……。迷いましたが手術をして、もっと強くなって帰ってこよう。そう決めたんです」

 昨季のリーグワンで復活をアピール、ようやく松田が日本代表に戻ってきた。

 だが、W杯の前には不安もあった。最後のテストマッチになった8月26日のイタリア戦では途中出場。見せ場を作れず、トライ後のコンバージョンを2本外した。外野からは「イップスみたいになってしまったのでは?」と不安の声が上がるほどだった。本大会に向けて「10番は松田なのか? それとも李承信なのか?」、答えが見えない状態が続いた。ある意味、ジェイミー・ジャパンが4年かかっても解決できない課題だった。

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photograph by Kiichi Matsumoto

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