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「もし桑田さんからの電話がなかったら」松坂大輔が語るプロ4年目“桑田の金言”と“清原の打球音”~連載「怪物秘録」第31回~

2023/09/06
ルーキーから3年連続最多勝を獲得した怪物に試練が訪れる。早々に6勝を積み上げた4年目、ケガで戦線離脱することに。しかしチームはリーグ優勝、迎えた日本シリーズで巨人と激突する。

 プロ3年目を終えた2001年のオフ、寒風吹きすさぶ東京湾近くのグラウンドに、松坂大輔の中高時代の仲間が集まった。みんな、今は本格的に野球をやっていない。そんな中、松坂は追い求めていた“光る球”に再会してしまったというのである。

◆◆◆

 いや、そのときに投げたのは軟式のボールだったんですけどね(笑)。軟球って硬球よりも小さいじゃないですか。軟球を投げたら、指のかかり具合から回転から何から何まで、こんなボールを投げたかったという、ビックリするような1球が行ったんです。低めのボールゾーンからグーッとホップして、キャッチャーミットの捕球面が下を向くような……そうしたら僕、次の瞬間には、あの球を硬式でどうやったら再現できるのかな、なんて思い始めちゃって、キャッチボールをしながらいつもよりボールを深く握ってみました。小さい軟球を扱うように、硬球を深く握ればあのときと同じ感覚を再現できる気がしたんです。

 でも、その試みは肩に負担をかけてしまいました。肩をかばいながら投げる感じが出てしまったんです。せっかくいい感じがつかめてきたと思ったら、僕はその握り方をすぐにやめることができませんでした。葛藤しているうちに、深く握ったままでもヒジを高く上げれば肩が楽になることに気づいて……それがよくなかった。今度はヒジのほうに痛みが出てしまいます。深く握ると軽く投げてもストレートがキレる感じはありましたが、それは両刃の剣でした。

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photograph by Kiichi Matsumoto

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