いかなるフットボールクラブも、“自分たちのペップ・グアルディオラ”を求めている。それは現在の彼ではなく、バルセロナで大成功した頃のカタルーニャ人監督だ。地元に生を受け、ユースからトップまで主力としてプレーし、クラブの伝統に身も心も浸り、指導者になってからは下部組織出身者たちをチームの根幹に据え、革新的なパフォーマンスの連続ですべてのタイトルを手にした指揮官である。
それは理想に違いない。だが夢と言い換えてもおかしくないほど、実現の可能性は小さい。そんな条件を揃えるとびきり有能な指導者など、滅多にいないからだ。近年のイングランドでは、マンチェスター・ユナイテッドがオレ・グンナー・スールシャールに、チェルシーがフランク・ランパードにと、クラブのレジェンドにそんな想いを託したが、どちらもうまくいかなかった。
アーセナルを蘇らせつつあるミケル・アルテタ監督は、“ガナーズ版グアルディオラ”になれるだろうか。このサン・セバスティアン出身のバスク人は、バルセロナの下部組織ラ・マシアで育まれたが、現役時代のほとんどを英国のクラブで過ごした。その最後の5シーズンでプレーしたのが、アーセナルだった。バルサとグアルディオラほどではないが、両者の繋がりは強い。
'19年12月にアルテタがアーセナルの監督に就任した時、1年半も待たされたと感じたファンは少なからずいたはずだ。'18年夏にアーセン・ベンゲル監督が22年間に及んだ長期政権に幕を降ろした時、後任の最右翼はアルテタだったが、クラブは結局、ウナイ・エメリを指名した。シニアレベルの監督経験を持たない新人の任命は、リスクが大きすぎると判断したようだ。
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