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「図太いというか…」「ミスターシービーっぽい」ソールオリエンスは“歴史を刻む才能”の持ち主【手塚厩舎を徹底取材】

2023/05/18
道悪の中山を切り裂いた豪脚は、混戦ムードを一掃した。果たしてダービーの大本命馬は、すでに完成形なのか。五大クラシック完全制覇に王手をかけた手塚調教師が、歴史的名馬との共通点と、さらなる進化の余白を明かす。

 戦後最少となるキャリア3戦目で皐月賞を制したソールオリエンス。2000mに延長された1999年以降、連対した馬さえいなかった京成杯からの直行日程をクリア。最終コーナー17番手からのごぼう抜きは、ナリタタイシン(12番手)の'93年を上回るレース史上最大の逆転劇だった。まさに規格外。ダービーで史上8頭目の無敗二冠を狙うこのキタサンブラック産駒は、全てのベールを脱いだのだろうか?

 答えは否。調教師の手塚貴久が証言する。

「まだ彼の全ては見せていないと思っています。皐月賞直後の会見でも上積みしかないと言いましたが、前走は(横山)武史とも“ダービーで一番良くなるようにしよう”と話して調整していました。実際に皐月賞は、ダービーではもっといい状態で走らせられると思っていた中での出走で、それでも勝っちゃったという感じ。興奮して思わず机を叩いて応援してしまいました(笑)。返し馬から発汗が目立ちましたし、口向きの悪さも払拭しきれていません。精神面にまだまだ成長の余地を残していますから、完成は先だと考えています」

「首差の辛勝で正直、焦りましたよ(笑)」

 トレーナーの弁には説得力がある。というのも、手塚はソールオリエンスがデビューするずっと前からその素質を見抜き、周囲に伝えてきたからだ。昨年11月、新聞各紙は「これまでのウチの厩舎の中で一番走る」という手塚の言葉とともに逸材のデビューを伝えた。新馬戦は単勝1.4倍。

「私が確勝級だと吹いて人気になっていましたから、首差の辛勝で正直、焦りましたよ(笑)。夏頃には、社台レースホースの吉田哲哉社長に“デビュー戦を勝つというレベルではなく、もっと上の馬かもしれませんよ”と伝えていましたし、フィエールマン('18年菊花賞、'19、'20年天皇賞・春)やシュネルマイスター('21年NHKマイルC)のような活躍をしてくれるのでは、と期待していました」

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photograph by Kiichi Matsumoto
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