
敵地トロントとはいえ、デビュー戦に臨む菅野智之は、込み上げてくる感情に少し戸惑いながら、マウンドへ歩を進めた。3月30日。35歳のオールドルーキーは、積年の思いを胸に秘め、初球に時速150kmの速球を投げ込み、メジャーでの第一歩を踏み出した。
「想像していた通り、すばらしい空間だと思いました。あんなに初回からストライクが入らないのは人生で一度もないです」
先頭をストレートの四球で歩かせ、2死後の連打で2点を奪われた。巨人での12年間で通算136勝を挙げ、日本シリーズ、WBCの国際舞台も経験してきた。身に覚えのある、登板前特有の緊張感、高ぶりとも違う。ただ、これまで歩んできた野球人生がフィードバックされるかのような感情のまま、プレートに足をかけた。両手のけいれんで4回終了後に交代し、黒星デビューとなったものの、初登板で去来した感慨は格別だった。
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