渾身の左足でドイツ、スペイン相手の勝利を支えながら、クロアチア戦後に歴史を変えられなかったと自分を責めた。W杯の真価を知った男は、固い決意を胸に4年後を目指す。
この男の一撃から、すべては始まった。
ドイツとのグループステージ初戦で、堂安律は1点を追いかける71分に投入された。その4分後、南野拓実のシュートを相手GKが弾くと、堂安がプッシュする。日本は1対1の同点に追いつき、さらに浅野拓磨が加点して大逆転劇を演じた。
日本代表でのゴールは、'19年1月のアジアカップ以来である。試合後には「ああいうこぼれ球がなかなか転がってこない3年だった」と笑ったが、決定的な仕事をする自分を思い描いていた。
「あの局面でテンションの上がらないウインガーはいない。ゼロイチでちょっとずつこっちに流れがきていたし、オレがヒーローになるというイメージを持って、ここ4日、5日ホテルで過ごしていた」
続くコスタリカ戦を0対1で落とした日本は、スペインとの第3戦を難しい立場で迎えた。前半終了時点のスコアは0対1で、このままでは3位に転落してしまう。
ベンチスタートの堂安は、三笘薫とともに後半開始からピッチに立つ。背番号8はドイツ戦と違う種類の野心を抱いていた。
「ドイツ戦の得点はただのごっつぁんゴールだって言う人もいたので、結果で黙らせたかった」
後半のキックオフとともに、日本はハイプレスを仕掛けた。前線からハメていき、堂安にボールがわたる。ペナルティエリア右外から左足を迷いなく振り抜くと、GKウナイ・シモンの両手を弾き飛ばす一撃がネットに突き刺さった。
「あそこは俺のコースなので、絶対打ってやるって決めていた。思い切って打った」
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photograph by Kazuo Fukuchi/JMPA