三笘薫は取材者泣かせの選手である。
取材エリアにはいつだって険しい表情で現れ、矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。心の中は誰にも覗かれたくない、といった様子で。
12月1日のスペイン戦後も同じだった。額に滲む汗をときおりタオルで拭いながら、少し上目づかいに質問者の意図を読み取ろうとしていた。田中碧や吉田麻也が笑みをこぼしているのとは対照的だった。
だが、この日のゲームの出来に、心の中ではガッツポーズをしていたのではないか。それは、こんな表現から想像できた。
ゴールライン上でボールを折り返し、田中のゴールをアシストした2点目のシーンに関して「入ったあとは、ちょっと足が長くてよかったなと思いました」と語ると、82分、相手ふたりの間にドリブルで割って入り、ファウルをもらったシーンについては、「あれは完全にシミュレーションです」と笑えるポイントをコメントに挟み込んだのだ。あくまでもさらりと、取材陣の反応を楽しむかのように――。
負傷者の続出に始まり、大金星をあげたドイツ戦、痛恨の敗戦となったコスタリカ戦、再び大逆転劇を演じたスペイン戦と、森保ジャパンはこの約1カ月、ジェットコースターのような浮き沈みを辿った。その線をなぞるかのように、いや、それ以上に三笘自身の置かれた状況も乱高下した。
10月14日のブライトンの公式戦で右足首を傷めて2試合を欠場すると、29日のチェルシー戦でプレミア初スタメンを飾って初アシストをマーク。続くウォルバーハンプトン戦、アーセナル戦で2試合連続ゴールをマークしたのも束の間、コンディション不良に陥り、日本代表への合流が予定より3日も遅れた。
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