北海道野付郡別海町。小さな町の手作りリンクから巣立った2羽の白鳥は、大空を翔け、金色の翼を手に入れた。子供たちのスケート愛を支える大人たちの真心と情熱。金メダル候補を生んだ漁業と酪農の町を訪ねた。
先頭は中学3年生。最後尾は小学1年生。ナイター照明に照らされたスケートリンク脇の雪道で、男女合わせて15人ほどの子供たちが隊列を作って、ウォーミングアップをしている。ダッシュをしても滑って転びそうな気配がまったくないことに驚いていると、いよいよ氷上練習。今度は凍てつく寒さもなんの、勢いよく滑り続けている。さすが、北海道――。
北京五輪スピードスケート男子500mと1000mの金メダル候補コンビ、新濱立也(高崎健康福祉大学職員)と森重航(専修大学)の生まれ故郷。それが、北海道東部に位置する別海町だ。約1万4500人の人口より牛の方が多いことで知られる酪農の町であり、北方領土を望む漁業の盛んな町でもある。冬には渡り鳥も飛来する。
「ハクチョウの隊列みたいになって滑るから、白鳥と名付けたんですよ」
別海スケート少年団白鳥(以下、白鳥少年団)の創設者であり、現在も指導者としてリンクに足を運ぶ楠瀬功さんが言う。この町にある1周400mの屋外オーバルは、地域の大人たちが水を撒いてつくる天然リンク。子供たちは広い町内のさまざまな地区から、保護者が運転する車に乗って毎日リンクにやって来る。
白鳥少年団には「5つの誓い」がある。
1、礼儀正しく
2、強い体と心をつくる
3、技術を高めるために練習に励む
4、決まりを守り、物を大切にする
5、仲間を大切にし、自分の役目を果たす
毎年10月の「入団式」には団長がこれを読み上げ、みんなで唱和する。新濱も森重も中学3年生の時は団長を務めており、“白鳥スピリット”が根付いている。
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photograph by Asami Enomoto