生涯最大の試練を乗り越え、2度目の大舞台に立った日本のエース。目標の決勝進出は果たせなかったが、地元東京で、再び世界へと歩み始めた。
スタート前、くちびるを真一文字に引き締めた。集中力を高めて飛び込んだ。ひとたび泳ぎ終えると、仲間を見つめて柔らかな笑み。まばゆいライトに照らされた東京アクアティクスセンターのプールで、池江璃花子が力強く泳いだ。
「'16年リオ五輪のときもそうでしたが、入場した瞬間に『こんなにキラキラしている会場はみたことがない』と思いました。今回もそれと一緒で、またこの舞台で泳げるんだ、素直にうれしい、すごく幸せ、そう思いました」
7月24日の競泳女子4×100mフリーリレー予選。白血病から奇跡の復帰を果たした池江は、日本チーム(五十嵐千尋、池江璃花子、酒井夏海、大本里佳)の第2泳者として登場。第1泳者の五十嵐からの引き継ぎタイムながらチーム最速の53秒63で第3泳者の酒井につないだ。ただ、最終泳者の大本の追い上げもかなわず、日本は3分36秒20で予選全体の9位。決勝進出はかなわなかった。
「隣といい勝負をしてきていたので、良い流れでつなぎたかった。最後に離されてしまったのが悔しかった。自分の力を10割出せたかと言われたら、10割は出せていなかったと思う。やっぱり最後はきつくて体も動かずにゴールタッチをしました」
自分に厳しい池江だけに反省が口を突くが、五輪という大舞台から受けた刺激はやはり大きかったようだ。
「自分の中では、個人で考えたらあまり良いレースはできていなかったと思うのですが、それでも、世界の舞台で戦うということのプレッシャーだったり、周りの雰囲気に圧倒されたことだったり、感じたことがありました」
特製トートバッグ付き!
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
photograph by Itaru Chiba