#1013
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この1年でラグビー界に何が起きたのか。~ドキュメント2019-2020~

2020/10/22
ラグビー日本代表は1年前のW杯から続く熱を抱き続けている
2019年10月20日、ラグビーワールドカップ準々決勝。日本代表はのちに優勝することになる南アフリカに敗れ、ブレイブ・ブロッサムズの冒険は幕を閉じた。あれから1年。2020年も続くかに思われたラグビー熱はコロナ禍で行き場を失いかけたものの、再び燃え出そうとしている。(初出:Number1013号この1年でラグビー界に何が起きたのか。~ドキュメント2019-2020~)

 10月10日。釜石鵜住居復興スタジアムでは、ラグビーワールドカップ開催1周年のメモリアルマッチが行われていた。

 観衆は2271人。新型コロナウイルス感染防止のため、席は間隔をあけて指定された。W杯のスケールとはかけ離れた人数ではあった。世界中からの観客を迎え、小学生たちが休むことなく「がんばれ、がんばれ」と声援を贈ったゴール裏の仮設スタンドも姿を消していた。大声を出し、歌を歌っての応援も禁じられた。

 だがそこには、あのときを思い出させる熱があった。

 9月以降「1年前のこの日」を振り返る記事が連日、各種メディアに掲載され、思い出の写真やエピソードがSNSに大量に投稿された。熱狂と興奮の怒濤に流され、もみくちゃにされた1年前の日々は、閉塞感に包まれた毎日を過ごす2020年の私たちにとってあまりに眩しく、現実感さえ乏しく見える。

 だが、熱狂から1年が経ち、ワールドカップの舞台となった12のスタジアムで、記念試合が行われたのはここ釜石だけだった。

10月10日、釜石にてW杯1周年記念試合、釜石シーウェイブスvsクボタスピアーズが行われた。会場には感謝の寄せ書きも ©Nobuhiko Otomo
10月10日、釜石にてW杯1周年記念試合、釜石シーウェイブスvsクボタスピアーズが行われた。会場には感謝の寄せ書きも ©Nobuhiko Otomo

試合を失ったカナダの選手たちが

 釜石会場は、開催12都市の中で、最も少ない2試合しか組まれていなかった。そのうちの1試合が、台風で中止になった。

 戦うはずだったのは、カナダとナミビア。

 ナミビアは過去W杯5大会に出場しながらいまだ未勝利のまま日本大会にやってきた。カナダはアメリカ地区予選で米国に敗れ、ウルグアイに敗れ、敗者復活の世界最終予選に回り、香港、ドイツ、ケニアとの戦いを経て出場20カ国の最後にW杯切符を得て日本へやってきた。両国はここまでともに3戦全敗。すでにプール戦敗退は決まったが、残る目標、大会初勝利をつかみ取るために釜石へやってきていた。

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photograph by KYODO

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